パニック障害(不安神経症)における症状の「原因」
2017/02/05
パニック障害(不安神経症)の原因となる要因は様々です。今だわからない原因が解明されていない部分もありますが、現在までの所で考えられるパニック障害の原因をご紹介したいと思います。
パニック障害の原因1:原因は脳の中にあり
私たちは、不安を感じることで、降りかかる危険から身を守っています。しかし、不安を感じる脳の仕組みが壊れたらどうなるでしょうか?パニック障害の原因もここに隠されていると考えられきます。
脳幹(のうかん)にある青斑核(せいはんかく)からは神経伝達部室であるノルアドレナリンが分泌されます。その刺激が大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)に伝わって、初めて私たちは不安や恐怖を感じることになります。
ところが、青斑核が誤作動を起こし、危険もないのに「警報」鳴らし続けたらどうなるでしょう。大量に分泌されたノルアドレナリンは、自律神経の中枢も刺激し、動悸やめまいなどの自律神経症状を起こします。これが、パニック発作を生じさせる原因と考えられます。
興奮した大脳辺縁系は、予期不安を起こし、さらに興奮が、前頭葉に伝わると、広場恐怖が起こってくると考えられます。
【青斑核】
不安や恐怖などをつかさどる部位。青斑核は神経伝達物質(ノルアドレナリン)を放出し、筋肉に血液を送り込んで心拍を早くしたり、血圧を高めたりする。ノルアドレナリンは心身に危険を知らせる警鐘のような役割をする
【大脳辺縁系】
喜怒哀楽の感情をつかさどる部位。
【前頭葉】
創造、思考、意志、感情など人間らしさをつかさどる部位。パニック発作を繰り返すと、予期不安や広場恐怖が起きるようになる。
※予期不安と広場恐怖については「予期不安と広場恐怖とは」で詳しく説明しています。
主な脳の部位と働き
大脳 | 大脳皮質 | 前頭葉 | 人間としての行動をコントロールする |
側頭葉 | 色々なことを記憶している部位 | ||
後頭葉 | 色、形などを見て判断する部位 | ||
大脳辺縁系 | 基本的な感情や本能が生まれる部位 | ||
脳幹 | 呼吸などの基本的な生命維持や本能にかかわる | ||
小脳 | 筋肉の動きの調整をしてからだのバランスをとる |
パニック障害が起こるメカニズム
パニック障害(不安神経症)は青斑核から興奮が発生し、それが大脳辺縁系、前頭葉へと影響を及ぼしていく病気だと考えられています。
1.パニック発作: 脳幹にある青斑核が誤作動を起こし、ノルアドレナリンを放出する
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2.予期不安: 興奮が、大脳辺縁系へと伝わり、予期不安を起こす
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3.広場恐怖: パニック発作が前頭葉で学習されると、広場恐怖を生む
パニック障害の原因2:脳内の神経伝達物質がうまく働かない
パニック障害(不安神経症)が全て解明されているわけではありません。ただし、いくつかの脳内神経物質がカギを握っていることはわかっています。
脳内で情報が伝達される仕組み
脳の神経細胞は、島のように一つ一つは離れています。神経細胞同士がネットワークをつくるには、多くの神経伝達物質のなかだちがなければ成り立ちません。パニック障害の原因は、この神経伝達物質のバランスに乱れが生じて起こると考えられています。
パニック障害に関系する神経伝達物質は、ノルアドレナリン、セロトニン、GABA(ギャバ)など。セロトニンはノルアドレナリンの活動を調整する役割を持つからです。
神経伝達物質にトラブルが起こる
神経伝達物質のGABAは、神経細胞の興奮を抑え、不安を軽くする働きがあります。また、GABAは、ジアゼパム(抗不安薬にも使用される)がベゾジアゼピン受容体と結合すると、働きが強くなるという特徴があります。
ところが、危険状態に直面すると、DBIという脳内物質が増加し、GABAの働きをいくつかの方法で邪魔をしてしまいます。結果、GABAは神経細胞の興奮を抑えることができず、不安が起こっていくのです。パニック障害を招く一因として、DBIのためにGABAがうまく働かないとも考えられています。
GABAの働きを阻害するDBIの2つの方法
➀ ジアゼパムより先に、ベンゾジアゼピン受容体に結合してしまう為、GABAの働きが弱まる
➁ GABA受容体の機能を低下させ、GABAと結合できないようにする
以上の方法で、DBIはGABAの働きを阻害すると考えられています。
パニック障害には誘因となる事柄もたくさんあります。原因と誘因は違います。ここでは、パニック障害を引き起こす誘因についてお伝えしたいと思います。
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パニック障害の誘因1.ストレスは原因ではなく、単なるきっかけ
パニック障害になる前、ストレスがありましたか?多くの人は「イエス」と答えます。ストレスは多くの病気に影響を及ぼしますが、パニック障害とはどんな関係があるのでしょうか?
ノルアドレナリンの過剰分泌が不安を起こす
私たちがストレスを感じる時、脳ではどんな変化が起こっているのでしょうか。
まず、脳はノルアドレナリンを分泌します。物理的なストレスの場合、ノルアドレナリンは、脳の広範囲を刺激し、時間が経つとともに消えていきます。
一方で、心理的なストレスは、不安や情動が起こる仕組みと関係が深い視床下部や青斑核(せいはんかく)、偏桃核という部分を集中的に刺激します。しかも、その刺激はストレスがある限り続きます。このため、視床下部や青斑核、偏桃核が興奮状態になり不安を起こるのです。
【物理的ストレス】
脳全体からノルアドレナリンが分泌される
【心理的ストレス】
視床下部や青斑核、偏桃核からノルアドレナリンが分泌される。ストレスがなくなるまで長時間続いて、分泌量が減らない。青斑核の過活動が起こり、神経伝達物質にトラブルを起こす。
ストレスがパニック発作に直結するわけではない
心理的なストレスが続くと、一部の脳が興奮しますが、それですぐにパニック障害を起こすわけではありません。ストレスによる脳の興奮は、神経伝達物質のバランスに乱れを招く引き金に過ぎないのです。
こんなことがストレスになる
つらいことだけではなく、嬉しいこともストレスになります。
【仕事上での変化】
昇進、栄転、退職、転勤、就職、失業、単身赴任など
【健康上の変化】
妊娠、出産、病気、事故など
【家族関係の変化】
子どもの受験、入学、子どもの自立、子どもの結婚など
【環境の変化】
家の新築、引っ越し、旅行など
【喪失体験】
配偶者の死、近親者の死、ペットの死、失恋など
【結婚問題】
結婚、離婚、別居、不倫など
ストレスチェックをしてみよう
最近の生活について思い当たることをチェックしてみよう
□ 朝起きられず、遅刻や欠席が多くなる
□ 仕事や家事の能率が悪く、失敗も増える
□ 義務を怠り、責任が乏しくなる
□ 考え込んだり、セカセカ、イライラする
□ 金銭の浪費や借金をよくする
□ 人を会うのが、おっくうになる
□ からだの調子が悪いという訴えが多くなる
□ 食事や飲酒の量が大きく変わる
□ 家族や友人への不平不満、反発がみられる
□ 寝つきが悪くなった
判定表
チェック数 | 判定 |
3~4 | ゆとりを失っている。心身の疲れをとろう |
5~7 | 生活習慣を積極的に立て直そう |
8以上 | 専門医と相談しよう |
パニック障害の誘因2.パニック発作を引き起こしやすい「カギ」
突然起こるパニック発作。でも、かならず、発作を引き起こす「引き金」になるものがあります。それは、ストレスや不安など、心理的なものばかりではなく、身近にある物質的な刺激にも注意が必要です。
原因は脳の中にある。ストレスはきっかけ
パニック障害(不安神経症)の原因は、新家伝達物質のバランスに乱れが生じるためと考えられます。では、そのきっかけはなんでしょうか。1つにはストレスがあげられます。ストレスが大きい人や、ストレスに弱い人は、パニック障害になりやすいと言えるでしょう。また、糖尿病や高血圧症のように、遺伝的な要因もパニック障害を起こしやすくします。アメリカの調査では肉親がパニック障害の人は、発症率が一般の人に比べて8倍も高いという報告があります。
原因をあれこれ考えても無駄
しかし、「きっかけ」は、かならずパニック障害を起こすとは限りません。同じような状況で同じようなストレスを受けても、何も起こらない人もいます。ですから、自分はなぜ、パニック障害になったのか、あれこれと考えるのは意味のないことです。パニック障害の人は、自分を責める傾向がありますが、むしろ、もっと気持ちを楽にもつことのほうが大切です。
パニック発作を誘発しやすい物と体調
きっかけはや原因は別として、身近なものの刺激が、パニック発作の引き金になることもあります。
- タバコ
- ドライアイス(二酸化炭素)
- コーヒー(カフェイン)
- ソーダ(二酸化炭素)
- ひどい疲れ
これらの刺激に敏感な体質を持っているとパニック発作を起こしやすい。寝不足、生理前、深酒、季節の変化なども発作を起こしやすいとされる。
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パニック障害に対する誤解「なりやすい性格」
パニック障害(不安神経症)になった人は、自分の性格に何か問題があるのではないか?と考えがちです。しかし、パニック障害と性格とは、あまり関係がないという見方が主流です。
気が弱いからパニック障害になった
パニック障害の人からよく聞かれるのは、「気が弱いからパニック障害になった」という言葉です。これは、大きな誤解です。パニック障害と「気の弱さ」は関係がありません。
パニック障害の人は神経質で依存的?
パニック障害(不安神経症)の人の多くは、心配性で神経質、依存的な側面もうかがえます。しかし、それはもともとの性格ではなく、病気によって変化した性格であることがほとんどです。
従来は明るく社交的で、行動力がある人でも、パニック障害が進行するにつれて「神経質で依存的」になっていくのです。病気が快復すれば、もとの性格に戻ります。
ここでは、パニック障害がおこる原因についてお伝えをしました。続いては、パニック障害における発作症状の種類と特徴についてみていきましょう。パニック発作といっても、その症状は様々で、たくさんの種類があります。
自分のパニック発作はどのタイプになるのかを把握し、その発作症状にあった対策をしていきましょう。