パニック障害(不安神経症)の「予期不安と広場恐怖」症状と対処法
2017/01/20
ここでは、パニック発作がすぐに完治しない大きな原因の1つとなっている「予期不安」と「広場恐怖」について説明をしたいと思います。
パニック障害と正しく向き合ううえで、とても大事なキーワードになりますので、ぜひ、目を通して頂いたいと思います。
消えない不安が「予期不安」や「広場恐怖」を生むわけ
また、発作が起こるのではないかと恐れる「予期不安」。行動範囲が狭くなり、生活に支障が出る「広場恐怖」。パニック障害は、発作で経験した不安や恐怖がこうのような症状を生む病気です。
パニック障害の症状というと、とにかくパニック発作に目が向きがちですが、やっかいなのはむしろ一度発作を経験したことで心に植えつけられる恐怖感や不安感です。パニック発作には繰り返し起こるという特徴があります。
発作を繰り返すと、発作のことが頭から離れなくなって、「また発作が起きたらどうしよう」という不安や恐怖にかられる、、、これが「予期不安」で、パニック障害の根本的な症状です。
パニック発作があっても、この予期不安がなければ、パニック障害とは診断されません。予期不安は必要に続くことが多く、発作がおさまっても、予期不安だけは長い期間にわたって消えません。
予期不安が強くなると、さらに「広場恐怖」をいただくようになります。これは、発作が起こりそうな場所や状況(混雑した場所や電車の中など)を避け、自分で自分の行動範囲を狭めてしまう状態で、パニック障害の患者さんの80%以上が多かれ少なかれ広場恐怖を持つを言われています。
人によっては、恐怖の対象がどんどん広がり、ついには家から1歩も出られなくなることもあります。
【予期不安とは】
パニック症状を繰り返すうち、発作の経験が頭を離れなくなり、発作がないときでも「また起こったらどうしよう」と不安感が強まります。不安の対象も「発作そのもの」から「発作を起こしたことがある場所や状況」へと広がっていきます。
【広場恐怖とは】
発作を予感する場所や状況を避けますが、それは発作が起こっても「すぐには逃げられない」「すぐ助けを求められない」状況や場所への恐怖です。
恐怖の対象は人によって様々ですが、交通機関(飛行機、新幹線、高速道路、地下鉄など)、見知らぬ人に囲まれる場所(エレベーター、人込み、長い行列など)が多いようです。恐怖の対象が広がり、家から1歩も出られなくなるケースもあります。
広場恐怖は患者さんを依存的にし、家族や友人を頼って自分ひとりでは行動ができなくなる場合もあり、日常生活に様々な支障が出てきます。
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パニック障害がたどる経過
【不意にパニック発作が起こる】
状況や場所にはかかわりなく発作が起こる
⇩
【発作が特定の状況や場所に結び付いたものになる】
発作体験と発作がおこった状況や場所を結び付け、緊張感を高めて、みずから発作が起こりやすい状況を作ってしまう(状況結合性パニック発作)
⇩
【予期不安をもつようになる】
発作の回数は減っていくが、発作経験は頭から離れず不安がつのる
⇩
【回避行動】
発作が起こりそうな場所や状況を避ける
⇩
【広場恐怖を持つようになる】
⇩
【人との接触を避けるようになる】
人前で取り見出し、恥ずかしい思いをすることを恐れる(二次的対人恐怖)
「予期不安とは」また発作が起こるのではないかと思いこむ!
「不安が不安を呼ぶ」とは、まさにこのことでしょうか?パニック発作を繰り返すうちに、不安が膨れ上がり、「また発作が起こるかもしれない」と不安を先取りするようになります。
また発作が起こるかもしれない不安
一度、パニック発作を経験すると発作のことが頭から離れなくなります。「発作で死んでしまう、、」「気が変になってしまうのではないか、、」と、不安が大きくなっていきます。そして、同時に「また、発作が起こったらどうしよう、、」という不安も強く持つようになります。これを「予期不安」といい、パニック障害の典型的な症状です。
そして、パニック障害は、パニック発作の後、再び発作が起こるかもしれない、という予期不安が1ヶ月以上続く場合をいう。
不安が一定以上続いてしまった場合に「陥りがちな心配」
予期不安により、不安な状態が長い間、続いてしまうと、様々な症状が出てきてしまいます。
さらにほかの病気を発症してしまうのではないか、、?
中には、統合失調症(精神分裂病)になってしまうかもしれないと心配する人もいるが、統合失調症は、10歳~20歳代に多く、幻覚や妄想が出現する。パニック発作が高じて統合失調症になることはありまえん。
自分をコントロールできなくなるのではないか、、、?
パニック発作中は、体が動かせないほどつらく、発作に対してどうしたらいいか自分でもわからなくなる。だが、自分の思考や行動をコントロールできないわけではありません。
心臓発作で死ぬかもしれない、、
激しい動悸や息苦しさがあってもパニック発作の場合は心拍数が増えるだけで、死ぬことはない。心臓病であれば、検査ですぐに異常が見つかります。
このように、パニック発作は、激しい症状が嵐のように吹き荒れるが、その症状で自分をコントロールできなくなったり、死ぬことはありえません。
不安の内容の変化
不安の対象が「パニック発作そのもの」から、いつしか「発作を起こしたことがある場所や状況」に広がっていく。不安の対象をよく区別することは、治療をしていく上で重要です。
パニック障害が慢性化すると、不安の対象がどんどん広がり外出もままならなくなる。また、何か重大な病気が見過ごされているのではないかと思いこみ、病院から病院へと渡り歩く例も少なくありません。
「広場恐怖とは」逃げられない場所が怖い!
パニック障害が進むと不安の対象はますます広がり、発作が起こりそうな場所や状況に不安を感じるようになります。これを「広場恐怖」といい、パニック障害の患者の7割~8割の人にみられます。
広い場所が怖いという意味ではない
広場恐怖とは、もしパニック発作が起こったら、人前で恥ずかしい思いをする場所、すぐに逃げられない場所、あるいは助けを求められない場所にいることに不安を感じるものです。
広場とはギリシア語の「アゴラ」(agora)が語源。「集会所」「市場」という意味で、けっして「広い場所」という意味ではありません。
広場恐怖の対象となる場所は、人によって違います。パニック障害の人によく見られるのは、急行電車や飛行機など、すぐに逃げることが出来ない場所に不安を感じます。
そのほか、家で1人で過ごすことが不安になったり、心臓がドキドキするような運動をしたり、心が動かされる映画を見るのを避けるのも、隠れた広場恐怖です。
広場恐怖の判断基準
その1
逃げるに逃げられない。(または、逃げたら恥をかく)ような場所や状況。または、パニック発作やパニック様症状が予期しないで、または状況に誘発されて起きた時に、助けが得られない場所や状況にいることについての不安。
広場恐怖が生じやすい典型的な状況には、家の外に1人でいること、混雑の中にいること、または列に並んでいる事、橋の上にいること、バス、電車、または自動車で移動していることなどがある。
(注:1つまたは2~3つの状況だけを回避している場合には特定の恐怖の診断を、または社会的状況だけを回避している場合には社会恐怖を考えること)
その2
その状況が回避されている(例:旅行が制限されている)か、または、そうしなくてもパニック発作または、パニック様症状が起こることを非常に強い苦痛または不安を伴いながら耐えしのいでいるか、または、同伴者を伴う必要がある。
その3
その不安または、恐怖症性の回避は、以下のようなほかの精神疾患ではうまく説明されない。
たとえば社会恐怖(例:恥ずかしい思いをすることに対する恐怖のために社会的状況のみを避ける)、特定の恐怖症(例:エレベーターのような単一の状況だけを避ける)、強迫性障害(例:汚染に対する脅迫観念のある人が、ごみや汚染を避ける)、
外傷後ストレス障害(例:強いストレス因子と関連した刺激を避ける)、または分離不安障害(例:家を離れること、または家族から離れることを避ける)。
広場恐怖の3つの重症度
広場恐怖は、恐怖の強さから大きく3つに分けられます。ただし、これはパニック障害の重症度とは異なります。また、パニック障害があっても広場恐怖がない患者も、全体の2~3割程度おられます。
軽度
どうしても必要があるところには出かけられる。
中等度
家族が一緒なら、必要な場所へ行ける
重度
周囲がすべて不安。家から出られなくなる
広場恐怖から回避行動へ
パニック発作がまた起こるかもしれないと想像し、その時にいたら困りそうな状況や場所に不安を感じます。そういった状態が続くと、人は広場恐怖の対象となる場所や状況をできる限り避ける「回避行動」をとるようになります。
そして、日常生活に支障をきたすようになっていきます。
多くの場合「うつ状態」へと変化していく
体の具合が悪い時には誰しも外出はできないし、したくありません。パニック障害も同じことで治療を何もしないと慢性化し、気分がひどく落ち込んでしまいます。
「なにもできない」から「なにもやりたくない」へ
広場恐怖や回避行動が見られるようになると、日常生活で「できないこと」が多くなっていきます。そんな自分を情けなく思いますが、発作がおそろしく、家にひきこもっているしかありません。
このような不安な生活が続くとしだいに精神的なエネルギーが低下し、「なにもやりたくない」状態へと陥っていきます。うつ状態です。これはうつ病とは違います。ただし、ただし人によってはうつ病を併発することもあります。
また、不定愁訴も起こり、それがうつ状態をエスカレートさせることもあります。うつ状態を併発したパニック障害は、治療が長くかかるので、できるだけ早く発見し、適切な治療を受けることが大切です。
うつ状態とうつ病の違い
うつ病 | うつ状態 | |
強さ | 強い | 弱い |
妄想 | 妄想的になることがある | 現実からずれない |
自殺 | 自殺することがある | 比較的まれ |
状況からの影響 | よいことがあっても気が晴れない | よいことがあると少し気が晴れる |
きっかけ | 環境や対人関係の変化が主 | 気落ちするような出来事 |
周囲からみて | 理解できないことが多い | 理解できることが多い |
仕事・趣味 | まったく手につかない | やっていると気がまぎれる |
うつ状態の進み方
その1: なんとなくだるい、おっくう、好きな事をしても楽しくないといった、ゆううつな気分が続く
その2: うつ気分は1日のなかでも良くなったり悪くなったりし、しかも日によっても変化する。食欲、性欲が低下し、仕事や勉強に集中できなくなる
その3: 自分の存よk在を無価値なものと考え、自殺したい気持ちが起こることもある。不眠や食欲不振が強く、からだを動かす意欲もなくなる
うつ状態、治療の効果があらわれると
その1: 打つ気分は続くが、少しずつ食欲が出てきて、眠れるようになる。気持ちが楽なる時間も増え、回復の兆しが見られる。
その2: 周囲の人から「元気になったね」といわれるほど、以前の生活が戻り表情もいきいきとしてくる。ここで焦らず、ゆっくりと西洋することがうつ状態の再発防止になる。
うつ状態の治療はなるべく早い時期にスタートすることが大切です。