パニック障害(不安神経症)精神療法の「認知行動療法と暴露療法」をやってみよう!
2017/01/20
薬には頼りたくない、、
という人に、精神療法の1つである「認知行動療法」と「暴露療法」をご紹介したいと思います。
それほど、難しい手順ではありませんので、よかったら、お試し下さい。
認知行動療法とは?
病気の根底にある恐怖や不安への誤った思い込み。それを「認知」と「行動」の両面から修正していくのが認知行動療法です。心理教育から段階的に進めていきます。
不安や恐怖を呼び込む心のクセを変えていく
パニック障害は、発作がおさまっても、予期不安や広場恐怖はかなり長い時間消えずに残ります。たとえば、心臓がドキドキしただけで「このまま死ぬのではないか」と感じてしまいます。
あるいは、電車に乗っていたときパニック発作の体験をしたため、「電車に乗ると発作が起こる」と思い込んでしまう、、、、これは、パニック発作がくり返し起こる中で、実際には問題がないのに危険があると誤って学習してしまったため、心の「クセ」ともいえます。
このようなクセは、否定的で悲観的な思考パターンを生み、予期不安や広場恐怖へと発展して、いつまでも残ってしまうのです。
認知行動療法はパニック障害の根底にあるこういった誤った心のクセを、「認知(ものの見方や考え方)」と「行動」の両面から、正しい方向へと修正するための治療法です。
患者さん自身で現実の問題点を解決し、みずからの力で心のクセを直していけるようになることが大切ですので、あせらずに段階的に行っていきます。
認知行動療法は、一般的にはこのような手順で進めていきます。
「認知行動療法」の手順
それでは、認知行動療法の進め方をお伝えしていきたいと思います。
- 手順➀ 心理教育
- 手順➁ 症状の観察や記録
- 手順➂ リラクゼーション法の指導
- 手順➃ 認知の再構成
- 手順➄ 暴露療法(エクスポージャー)
手順➀ 心理教育
パニック障害のしくみ(パニック発作や予期不安、広場恐怖などの症状はなぜ起こるのか)を理解するために病気の基礎知識を学びます。
認知行動療法が病気にどのような働きかけをするかという意義などを知ることで、治療にとり組みやすくなります。
手順➁ 症状の観察や記録
自分の状態を観察し、パニック発作の頻度や、症状などを記録します。どんな状況による刺激で発作が起こるのか、自分が何に対して不安や恐怖を感じているか、客観的にみられるようになります。
手順➂ リラクゼーション法の指導
自律訓練法や呼吸法の指導を受けます。刺激に対して過敏になっている状態をリラックスすることで自己コントロールし、落ち着かせます。やり方を専門家から教わり、自分でもできるようにします。
自律訓練法と呼吸法の詳しい内容ややり方については、パニック障害の精神治療「自律訓練法と呼吸法」でリラックス効果を参考にして下さい。
手順➃ 認知の再構成
恐怖は、自分の身体感覚を必要以上に悪く解釈し、危機的状況と誤って認識してしまうところから生まれるとされます。そこで、自分の解釈に誤りはないかどうかを検討し、恐怖への認知を再構成します。
「認知の再構成」についての詳しい内容については、パニック障害 認知治療の「認知の再構成」についてで解説していますので参考にして下さい。
手順➄ 暴露療法(エクスポージャー)
不安や恐怖を感じている状況に実際に身をさらす行動療法(暴露療法)を行っていきます。具体的な方法は次節で詳しくお伝えしていきます。
「暴露療法」とは?
暴露療法は、特に広場恐怖を克服する方法として効果があります。不安な場面にあえて身をさらし、不安が消える経験を積み重ねることで、"心の免疫力"がつきます。
「暴露療法」の手順
認知行動療法手順が終わったら、次に「暴露療法」を進めていきます。暴露療法で不安や恐怖の場面に少しずつ慣らしていきます。
暴露療法は、段階的にくり返し行うことが大切です。
- 手順➀ 不安階層表をつくる
- 手順➁ 最初は付き添ってもらう
- 手順➂ 同じ場面でくり返し行う
- 手順➃ ひとりで行動してみる
手順➀ 不安階層表をつくる
- 自分が不安や恐怖を感じる場面を10項目書き出します。
- 不安の程度が弱いものから強いものへ段階をつけ「不安階層表」をつくります。
- 階層表は患者さんによってそれぞれ異なる独自のもので、暴露療法のメニューになります。
- 暴露療法はこの階層表に従い、最初は不安の程度が弱いものから始め、だんだん強いものへと進めていきます。
手順➁ 最初は付き添ってもらう
- 暴露療法は、初めは医師や臨床心理士などの専門家に付き添ってもらい行います。
- 次は、家族など身近な人に付き添ってもらいます。
手順➂ 同じ場面でくり返し行う
- がまんをして不安が軽くなるのを経験すると、その経験は積み重ねていくことが出来ます。
- 効果をあげるために、同じ場面での暴露療法をくり返し行います。そうすることで、「不安を軽くした」経験が身についていきます。
手順➃ ひとりで行動してみる
- 不安の程度が弱いものを選び、ひとりで行動してみます(自己行動療法)。チャレンジの回数が増えるほど、不安感は軽くなっていきます。
「暴露療法」のポイントとコツ
逃げずに自分で体験する
どんなに不安を感じても途中で逃げず、一定時間がまんをして、不安が軽くなることを必ずみずから体験するようにします。
不安は長くは続かず、15分ぐらいから、長くても90分までです。
不安がしずまる前に逃げ出すと、一時的に不安は軽くなりますが、結局のところいつまでも不安は残ってしまいます。
緊張をほぐしておく
行動する前には、自律訓練法などで緊張をほぐしておきましょう。
薬を飲んでおく
行動の前に抗うつ薬を飲んで発作が起きないようにしておきます。また、抗不安薬(頓服)を飲んで不安をやわらげておくことも効果があります。
喜びが待っている
親しい友人に会いに行く、好きな芝居を観に行く、評判のレストランへ行くなど、不安以上に大きな喜びが待っていると、行動にはずみがつきます。
不安や恐怖の解消法を経験して身につける
行動療法は暴露療法(エクスポージャー)と呼ばれ、その名のとおり、不安や恐怖を感じる場面にあえて身をさらし(暴露し)ます。
そうやって不安に徐々に慣れ、最終的には不安を完全に取り除くことを目指します。この療法のポイントは、不安を感じていた場所や状況においても、実際には「発作が起こらない」ことを自分で体験し、確かめるところにあります。
行動を通して(身をもって)、不安や恐怖は誤った思い込みだったと認識できるようにするわけです。
ただし、暴露療法を行うためには、十分な準備や、不安をコントロールする練習が必要です。これをしないまま、いきなりやってしまうと、患者さんのなかには暴露によって不安感が高じて、発作が起こることもあります。
ある状況、ある場所が、本当は発作とは関係がないということを確かめられないままに症状が強まって、逆効果となるのです。暴露療法は、無理をせず、少しずつ段階的を追って行い、階段ごとに「発作は起こらず、不安が弱まっていく」ことを確認しながら次のステップへと進むようにするのがポイントです。